本展は、英国・テート美術館のコレクションより 「光」 をテーマに作品を厳選し、18 世紀末から現代までの約 200 年間におよぶアーティストたちの独創的な創作の軌跡に注目する企画です。 |
会期: 2023 7.12 [Wed.]~ 10.2 [Mon.] 東京展は終了、大阪展で開催。 |
'2023 7_11 「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」 のプレス内覧会風景と、図録、「PRESS RELEASE」などからの抜粋文章です。 |
「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」 |
「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」 展の図録、Press Release、プレス説明会、他よりの抜粋文章です ― | |
「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」 |
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展示構成 (図録からの抜粋文、概要説明、他でご紹介しています。) |
'2023 7_11 「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」 のプレス内覧会風景と、図録、「PRESS RELEASE」などからの抜粋文章で紹介しています。 |
画像をクリックすると 「 Chapter 2 | 自然の光 | Natural Light 」 がご覧いただけます。 |
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Chapter 1. | 精神的で崇高な光 | Spiritual and Sublime Light |
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17 世紀から 18 世紀にかけて欧州は理性と秩序を重んじる啓蒙の時代を迎えました。 芸術表現にも共通する潮流となりましたが、個人の主観や感性を重視するロマン主義の画家たちはこうした価値観に疑問を抱き、精神世界への関心を次第に強めていきます。
光と陰のドラマチックな効果を生かすことで人の内面や精神性に迫り、さらには予測できない出来事への畏敬の念を絵画で表現しようとしました。 |
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左・No.06 ジョン・マーティン(1789-1854) 《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》 1822 年、2011 年修復 油彩/カンヴァス 161.6 x 253.0 cm テート美術館 / 中・No.12 ジョン・ヤング=ハンター(1874-1955) 《私の妻の庭》 1899 年 油彩/カンヴァス 106.7 x 182.2 cm テート美術館 /右 ・No.10 ウィリアム・ホルマン・ハント(1827-1910) 《無垢なる幼児たちの勝利》 1883-84 年 油彩/カンヴァス 156.2 x 254.0 cm テート美術館 |
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左・No.06 ジョン・マーティン 《ポンペイとヘルクラネウムの崩壊》 本作品は、紀元 79 年にイタリア半島の姉妹都市ポンペイとヘルクラネウムを襲ったヴェスヴィオ山の噴火がもたらした甚大な被害を想像させる。 ここで描かれているのは、スタビアの街の海岸からナポリ湾越しに見渡した光景で、前景には逃げ惑う群衆が見える。 マーティンの作品は、崇高でこの世の終焉をもたらす自然の力や、神の思し召しに立ち向かう人間の無力さを表現するものであった。 / 中・No.12 ジョン・ヤング=ハンター は、ロンドンのロイヤル・アカデミー・スクールで絵画を学んだ。 富裕層や特権階級の人々にもなじみ、のちにロンドンの文化的エリートたちの華やかな肖像画でよく知られるようになった。 本作品のモデルはハンターの最初の妻で画家のメアリー・ヤング=ハンター(1872-1947) で、1899 年にロイヤル・アカデミーで展示されると、「若々しい想像力が向かう方向を明確に示す現代的な精神による代表例」 の一つと評され、大きな称賛を浴びた。/ 右・No.10 ウィリアム・ホルマン・ハント は、敬虔なキリスト教徒であった。 ここで描かれているのは、ユダヤの王ヘロデが幼子イエスを殺そうとしていることを知ったヨセフが、マリアとイエスを連れて夜のうちにエジプトへ逃避する場面である。 イエスら親子は月明かりに照らされているが、彼らを取り囲む幼く愛らしい殉教者たちの行列はまるで天からの光を受けたように輝き、よりいっそう明るく見える。 |
画像をクリックすると 「 Chapter 4 | 光の効果 | Light Effects & God's Light | 神の光」 がご覧いただけます。 |
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Chapter 3 | 室内の光 | Interior Light |
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都市の近代化がさらに進んだ 19 世紀末からは、室内というプライベート空間をどう描くかにアーティストたちの関心は広がりました。 窓から入ってくる光の効果などを作品に取り入れることで、人同士の心のつながりや、個人の内面を鮮やかに写しだそうとする試みが相次ぎました。 |
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左・No.34 ウィリアム・ローゼンスタイン(1872-1945) 《母と子》 1903 年 油彩/カンヴァス 96.9 x 76.5 cm テート美術館 / 中・No.32 ウィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916) 《室内》 1899 年 油彩/カンヴァス 64.5 x 58.1 cm テート美術館 / 右・No.33 ウィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916) 《室内、床に映る陽光》 1906 年 油彩/カンヴァス 51.8 x 44.0 cm テート美術館 |
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左・No.34 ウィリアム・ローゼンスタイン 《母と子》 本作品には、画家の妻・アリスと、夫妻の最初の子どもで当時 2 歳くらいだったジョンが一緒に描かれており(彼は成長して美術史家となり、1938 年から 64 年までテート美術館の館長を務めた)、窓に背を向けて座ったアリスが子どもを膝の上に立たせている。 ローゼンスタインは、自然主義的で緻密な光の描写に細心の注意を払っており、それは人物の髪、肌、衣服における光の表現から、暖炉やパネリングされた壁の周りの影と反射の複雑な動きにまで見て取ることができる。/ 中・No.32 ウィルヘルム・ハマスホイ が描いたのは、画面の外に位置する窓から差す、柔らかな光に照らされた室内である。 壁やドア、調度品に映る光と影の戯れは、この部屋を立体感のある空間として認識させるのに不可欠といえる。 一方で、女性の描かれ方は曖昧である。/ 右・No.33 ウィルヘルム・ハマスホイ 光は、ハマスホイの絵画にとって不可欠な要素である。 このデンマークの画家による作品は、オランダにおけるバロック期の巨匠であるヨハネス・フェルメール(1632-75) とも比較される、灰色を基調とした抑制された色彩が特徴である。 フランスの印象派の画家たちと同じように、ハマスは同じ部屋を一日の異なる時間帯に何度も描き、光の差し方や天候の条件などの微妙な違いを記録した。 |
画像をクリックすると 「 Chapter 6 | 光の再構成 | Reconfiguring Light ] & [ Chapter 7 | 広大な光 | Expansive Light 」 がご覧いただけます。 |
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Chapter 5 | 色と光 | Colour and Light |
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美術と工芸、デザインの総合的な教育を目指したバウハウスは、幾何学的な形態を用いて光と色の関係を考察するアーティストたちが大きな足跡を残しました。
その一人であるドイツ出身のヨーゼフ・アルバース(1888-1976 年) は、色は周辺の色との関係によって見え方が変わることを追求し、幾何学的な造形の中に色を配置することで、ある色の面が手前に見えたり、一方で奥に見えたりするといった現象が起きることを示しました。
同じくバウハウスに招聘されたハンガリー出身のモホイ=ナジ・ラースロー(1895-1946)、ロシア出身で、のちにドイツで活躍するワシリー・カンディンスキー(1866-1944
年) も色同士の関係性が生み出す視覚的効果を探求しました。 この視点は、第二次世界大戦後の抽象画家の最も重要なテーマの一つでもありました。 |
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左・No.70 ゲルハルト・リヒター(1932-現在、ケルン) 《アブストラクト・ペインティング(726)》 1990 年 油彩/カンヴァス 251.0 x 351.0 cm テート美術館 © Gerhard Richter 2023 / 中・No.71 ブリジット・ライリー(1931-現在、ロンドン) 《ナタラージャ》 1993 年 油彩/カンヴァス 165.1 x 227.7 cm テート美術館 © Bridget Riley 2023-2024. All rights reserved. / 右・No.62 ワシリー・カンディンスキー(1866-1944) 《スウィング》 1925 年 油彩/板 70.5 x 50.2 cm テート美術館 |
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左・No.70 ゲルハルト・リヒター は、「私の絵画における中心的問題は光である」。 1964 年から 65 年の間にゲルハルト・リヒターはこう述べている。 抽象絵画と具象絵画のいずれの制作においても、リヒターは光がどのように機能し、作品の外観を超えて現実を示すことができるのかということに関心を注いでいる。 光輝く二連画の本作品(cat.70) は、2枚のカンヴァスをつなぎ合わせたものである。 画面構成においてはっきりとした具像的な要素は存在しないが、白、赤、くすんだオレンジ色の分厚い絵具の層の間から、不鮮明かつ不明瞭になった、念入りに描き込まれたイメージがほのめかされている。/ 中・No.71 ブリジット・ライリー 1960 年代半ばまでに、ライリーは反復する幾何学的パターンに基づく抽象絵画によって世界的な名声を得た。 この幾何学模様は、動きの感覚を作り出すために目の錯覚を利用したものだった。 本作品(cat.71) では画面は垂直方向と対角線方向に分割される。 それは多様な細かい色面を生み出し、色同士の極めて複雑な関係が作られる。 1981 年、彼女はインドを旅した。 「ナタラージャ」 とは、ヒンドゥー教の神話で 「舞踊の王」 を意味するシヴァ神のことである。 シヴァ神は多くの場合、複数の腕を持つ宇宙の踊り手として表象される。 本作品では二つの異なったリズムが強調され、作品の主要な要素となっている 縦に走る色の帯は斜めに切られ、ダイナミックな動きを感じさせる。/ 右・No.62 ワシリー・カンディンスキー は、祖国ロシアの民話や偶像、また、最初の妻である芸術家ガブリエーレ・ミュンター(1877-1962) と暮らした 1900 年代初頭のミュンヘン郊外の風景から影響を受けていろ。 1913 年には、すでにカンディンスキーは 「ファランクス」 と 「青騎士」 という二つの影響力のある芸術家団体の創設に貢献し、パリのサロン・ドートンヌにも複数回出品していた。 そしてニューヨークで行われた著名な展覧会 「アーモリー・ショー」 でも最も急進的な抽象作品を発表していた。 1921 年、カンディンスキーはドイツに戻り、芸術、建築、デザインの学際的な教育機関であるバウハウスで、1933 年に同校が閉校に追い込まれるまで教鞭をとった。 この作品は、カンディンスキーがヴァイマール(ワイマール) に滞在していた頃、バウハウスが 1925 年にデッサウに移転する前に描かれたものである。 |
画像をクリックすると 「ギャラリートーク」 |
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「テート美術館」 (イギリス・ロンドン) |
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「テート美術館とは」 | |||
TATE(テート) は、英国政府が所有する美術コレクションを収蔵・管理する組織で、ロンドンのテート・ブリテン、テート・モダンと、テート・リバプール、テート・セント・アイヴスの 4 つの国立美術館を運営しています。 |
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「光が持つ色彩」 ケリン・グリーンバーグ(図録よりの抜粋文です。) | |||
17 世紀から 18 世紀初頭にかけてヨーロッパでは、「光」 に対して科学の観点から考慮する機運が急速に高まった。 とりわけ天文学や顕微鏡を扱う学者にとって、「光」
は自然を観察し、分析するための役割を果たした。 一方で、ルネ・デカルト(1596-1650)、クリスティアーン・ホイヘンス(1629-95)、アイザック・ニュートン(1642-1727)
といった学者にとって、「光」 はそれ自体が重要な研究の対象であった。 デカルトは、宇宙のあらゆる物質は小さな 「粒子」 によって作られていると考えた。
ホイヘンスは、1690 年出版の 『光についての論考』 で、「光」 は波状の攪乱(波動) であるという考えをまとめた。 一方、ニュートンは 1704
年の著作 『光学』 で、「光」 は直進し予測可能な方向に跳ね返る粒子によってできていると主張した(光の粒子論)。 光の屈折、回折、干渉を説明するには、ホイヘンスの
「光」 の波動論の知識が必要だったのである。 |
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参考資料:「テート美術館展 光 ― ターナー、印象派から現代へ」図録、PRESS RELEASE & 報道資料 、他。 |
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